2011年10月17日月曜日

特別上映会『クスクス粒の秘密』関連情報①~大阪上映会開催にあたって



たとえば海外の映画サイトで評判を知って、あるいは国内の映画祭で実際に作品を見て、「この映画、公開されるといいな」と思った経験は、映画ファンであれば誰しも一度はあることだと思います。ただの願望ではなく、「公開されるべきだ」と強く感じた経験もひょっとしたらあるかもしれない。私にとってはそれが、2008年の東京国際映画祭で初めて知ったアブデラティフ・ケシシュ監督の『クスクス粒の秘密』というフランス映画でした。鑑賞直後の熱に浮かされたような感覚―とその余熱はいまだ体に残っています。

あれから3年も経ちました。『クスクス粒の秘密』が出品されたWORLD CINEMA部門上映作品は当時全く買い手がつきませんでしたが、結局『シルビアのいる街で』は昨年8月に公開され、カンヌ・グランプリの『ゴモラ』(傑作!!)も、『シルビア~』同様配給を手がけた紀伊国屋書店そしてマーメイドフィルムという素晴らしすぎる映画会社さまの努力により、何とか陽の目を見ることができました(シアター・イメージフォーラムほかで10月末から公開)。そういえばマイク・リー監督の『ハッピー・ゴー・ラッキー』も、”三大映画祭週間”で再び上映されました。

ですが、残念ながら、『クスクス粒の秘密』については未だ情報を聞きません。2008年のフランス映画界で最も賞賛された作品であるにも関わらず、です。18ヶ国で公開されましたが、そのうちの1つに日本が入っていないという不遇。ミニシアター冬の時代とはいえ、日本はいつから映画配給後進国になってしまったのか――と考えるのは些か短絡的かもしれませんが、そのような思いをどうしても拭いきれないのも、また事実です。

そもそも、アブデラティフ・ケシシュ監督は『ダッキング(L'Esquive)』という作品で、2005年のフランス・アカデミー賞(セザール賞)において『クスクス粒の秘密』同様に作品賞・脚本賞・監督賞・新人女優賞の4部門を受賞したというのに、日本では話題にならなかった。つまり、アルノー・デプレシャンが「現代フランスにおいて最も重要な映画監督」と絶賛するほどの才能が、2度にわたり無視されたわけです。果たしてこんなことがあっていいのでしょうか。

『クスクス粒の秘密』は、私の知る限り、日本では東京国際映画祭、そして東京日仏学院の企画にて2度上映されました。もっと多くの人に見られるべき映画だ、もう一度上映できないものだろうかと考えていると、ちょうど横浜日仏学院のシネクラブで上映の予定があるとの話を聞き、それならばここ大阪でもぜひ上映をしたいと提案したところ、快諾して頂けた。そしてこの企画をプラネット・プラスワンに持ち込み、横浜日仏学院、大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズの多大なる協力を受け、11月12日~14日までの3日間、計3回の特別上映会が決定。経緯はざっとこんな感じですが、正直に言って、私のような、ただの映画ファンで上映実績もない人間の話を聞いてくださり、そして協力してくださったことに驚きを隠せない。今回相談に乗って下さった多くの方々に、この場を借りて改めて御礼を申し上げたいです。


上映会まであと1ヶ月弱。ブログのコンセプトに沿いつつも、やはり並行して『クスクス粒の秘密』を宣伝していけたらと思います。



『クスクス粒の秘密』上映会情報

大阪
プラネット・プラスワン
11月12日~14日
http://www.planetplusone.com/special/post_65.php


横浜
東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)
横浜日仏学院シネクラブ
11月19日 18時~
http://institut.jp/ja/evenements/11089






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序に代えて



「日本未公開の"不遇な"映画たちに明かりを灯す」――これがこのブログのコンセプトです。


具体的には、1.日本未公開映画の情報を発信する、2.そうして未知なる映画の発見・発掘を促す、3.そうして日本未公開映画についての関心を高める。どれも似たようなものですが、 以上の3つをこのブログの屋台骨にしていきたいと考えています(もちろん、既存の日本公開映画についても語っていけたらと思います)。


このブログが目指すところはもうひとつあります。それはブログ全体を未公開作品の”上映推進活動”のひとつに見立て、その発展形として、”不遇な”映画たちの上映会を実際に行うことです。配給会社が買い付けないのであれば、せめて2、3日でもいいから、自分たちでやってみせよう、というスタンスです。利益は出ない。ひょっとしたら赤字になるかもしれない。結局残るのは満足感だけかもしれませんが、日本の映画環境を少しでも良くしたい、という思いは止められない。何より映画たちがかわいそうだ。

そんなわけで、今回、『クスクス粒の秘密』というフランス映画の特別上映が決まりました。これをきっかけとして、第二弾、第三弾と実施していければ、と考えています。皆さまよろしくお願いします。









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