2011年11月1日火曜日

特別上映会『クスクス粒の秘密』関連情報②~あらすじ・解説・監督について







上記の画像は10日ほど前に刷り上った『クスクス粒の秘密』上映会のチラシです。ひょっとしたら大阪市内のミニシアターで見かけた方もいらっしゃるかもしれません。知らない方のために、チラシ裏面に記載されている本作のあらすじ・解説・監督に関する情報をこの記事でご紹介します。




<あらすじ>
 
 港町セートで働く60代の港湾労働者・スリマーヌは、寄る年波に勝てず仕事も遅くなり、ついにはリストラの対象となる。彼には前妻スアドとのあいだに3人の子ども、そして孫がいるが、息子たちには厄介者扱いされ、義理の娘のリムだけが理解者だった。無力感が募るスリマーヌ。だが彼はかねてからの夢を実現すべく、古い船を買い取ってリフォームし、クスクス料理専門のレストランをオープンさせようとする。一家総出で開店パーティを行うが・・・。


<解説>


 『クスクス粒の秘密』はクスクス料理を活劇の原動力とした家族ドラマである――と言いたいところだが、そう簡単に要約してしまうことが憚られるほど、複雑な魅力を備えた映画だ。あらすじを読むと、一見、リストラされた60代男の人生再生記のように思える。しかし、一筋縄ではいかない。スリマーヌの恋人の存在で気まずくなった家族の関係が回復する感動の愛の物語かというと、そうでもない。少なくとも、この映画を特定のジャンルや紋切り型の表現に当てはめることはできないだろう。

 そのように形容できない点こそがこの映画の魅力であると言えるが、たとえ大きな事件が起きなくとも、小津安二郎の影響を色濃く受けるというケシッシュ監督が得意とする、ありふれた日常生活のワンシーンから人々の雑多な感情をすくい取るリアルな――演劇的な要素を排した――緊張感あふれる演出に、終わりが訪れる瞬間までスクリーンから目が離せなくなるに違いない。その握力の強さに、最後にはいつの間にか自分もレストランでクスクス料理を待つ客の一人になっているような感覚までおぼえるだろう。

 ジャンル分け不能の”扱いづらさ”のせいか、日本人には分かりにくい移民という問題が絡むせいか、はたまた出演者が無名なせいか、理由は分からないが(あるいは全てが理由かもしれない)、『クスクス粒の秘密』は残念ながら日本では劇場公開が決まらなかった(2011年10月現在)。だが2007年度のフランス映画界で最も称賛された傑作であり、フランス・アカデミー賞(セザール賞)においては作品賞・監督賞・脚本賞・新人女優賞(アフシア・エルジ)を受賞。アブデラティフ・ケシッシュの名前は日本ではほとんど耳にしないものの、セザール賞を既に2度受賞したことからも分かるように、その才能は端倪すべからざるものがある。少なくとも無視できない監督だ。実力を確かめるうえでも、今回の上映会は見逃せない。



<監督について>


アブデラティフ・ケシッシュ(Abdellatif Kechiche)


 1960年、チュニジア生まれ。6歳のときに家族でフランスへ渡る。舞台俳優として活動を始め、1984年に『Le Thé À La Menthe』(Abdelkrim Bahloul監督)で映画デビュー、主役を務める。初めてメガホンを取った『La Faute à  Voltaire』(2000)で映画監督として頭角を表すと、2作目となる『L'Esquive』(2003)、そして3作目の『クスクス粒の秘密』(2007)でそれぞれセザール賞作品賞・脚本賞・監督賞・新人女優賞を受賞。とりわけヨーロッパで高く評価されており、その実力はアルノー・デプレシャン(『クリスマス・ストーリー』『キングス&クイーン』監督)をして「現代フランスで最も重要な映画監督」と言わしめるほど。自身の境遇から移民を主人公にした作品が多く、しばしばパリ郊外や地方が舞台となるが、最新作の『Vénus noire』(2010)はこれまでのケシッシュ作品とは趣が異なり、19世紀初頭のロンドン・パリの見世物小屋が舞台、新境地を開拓した。現代フランス映画で次なる作品がいま最も待たれる監督の一人である。












『クスクス粒の秘密』上映会情報

大阪
プラネット・プラスワン
11月12日~14日
http://www.planetplusone.com/special/post_65.php


横浜
東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)
横浜日仏学院シネクラブ
11月19日 18時~
http://institut.jp/ja/evenements/11089







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