2012年9月1日土曜日

未公開フランス・アニメーション傑作選vol.1

本年度アカデミー賞ノミネート作品『パリ猫の生き方』を含むフランスのアニメーション作品を2本、 テアトル梅田にて日替わり上映致します。




【未公開フランス・アニメーション傑作選vol.1】

世界有数のアニメーション製作国であるフランス。だがこの10年間のうち、日本で公開されたフランスのアニメーション作品は10本に満たない。不遇にも日本公開に至らなかった作品を、今回、傑作選第1弾として、大人の紙芝居とも言うべき美麗な『パリ猫の生き方』と、少女から大人への通貨儀礼を暗喩を込めて描く『U』を、関西で初公開!



【上映作品】
『U』…9/8(土)、11(火)、13日(木)
『パリ猫の生き方』…9/9(日)、10(月)、12日(水)、14(金)

【上映時間】
連日10:00~ 日替上映


【料金】
一般・学生:1,300円/シニア・高校生以下:1,000円
会員(TCG、クラブ・フランス、センターアリアンス受講生):1,000円
★『U』又は『パリ猫の生き方』の半券ご提示で1,000円でご鑑賞頂けます。
※その他割引との併用はできません。


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『パリ猫の生き方』

(2010年/フランス/35mm/日本語字幕/70分)
監督:アラン・ガニョル、ジャン=ルー・フェリシオリ
声の出演:ドミニク・ブラン、ブルノ・サロモーヌ、ベルナデット・ラフォン

人知れず二重生活を営む猫がいた。猫の名はディノ。昼は少女ゾエの飼い猫として、夜は盗賊ニコの相棒として過ごしていた。ある日ディノは、大変高価な腕輪をゾエのもとへ運んでくるが、ゾエの母親で刑事であるジャンヌの上司が、その腕輪が盗まれたものだということに気がつく。ある夜ゾエがディノのあとをつけてみると、悪名高いギャングのコスタの話をうっかり聞いてしまい、不測の事態に巻き込まれる。ニコとディノは少女を危機から救おうとするが…。 夜のパリを舞台に繰り広げられる、美しく心躍る冒険活劇。






『U』

(2006年/フランス/デジタル上映/日本語字幕/75分 )
監督:セルジュ・エリサルド,グレゴワール・ソロタレフ
音楽:サンセヴェリーノ
声の出演:ヴァヒナ・ジョカンテ,イジルド・ル・ベスコ

モナは数奇な運命の下に生まれたお姫さま。ある日モナが泣いていると、「U」という一角獣が現れる。Uはモナが困っていると、彼女を守って元気をくれる。モナは成長し、とても美しいお姫さまになった。その頃、隣の森に温厚で魅力的で魔法を使うウェウェの仲間達が住み始めたが…。ユーモアとシリアスさが入り交じった寓話。




この機会にぜひご鑑賞ください。




主催:大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズ、シネマ・ランタン
協力:横浜日仏学院、ユニフランス・フィルムズ、Institut Francais、テアトル梅田

2012年4月25日水曜日

大阪特別上映会『美輪明宏~黒蜥蜴を求めて』



フランス人監督が美輪明宏の数寄な人生に迫ったドキュメンタリー映画『美輪明宏~黒蜥蜴を求めて』。

本作品は横浜のミニシアター、シネマ・ジャック&ベティで昨年の11月に上映されましたが、今回、大阪でも特別に上映されることになりましたのでお知らせ致します。関西初上映!2回のみの上映です。


『美輪明宏~黒蜥蜴を求めて』

パスカル=アレックス・ヴァンサン監督作品(フランス/2010年/モノクロ、カラー/デジタル/65分/日本語・英語字幕付き)








<内容>
深作欣二のカルト映画『黒蜥蜴』(1968年)に登場する、男たちを魅了する妖艶なヒロインは男性が演じていた。彼の名は美輪明宏。ジェンダー問題に果敢に立ち向かい、俳優、歌手、テレビ出演、エッセイの執筆など、50年にわたる活動を通して、魅惑的な人物のアイコンであり続ける美輪明宏の数奇な人生を、インタビューやアーカイブ映像を交えながら追う。


<解説
>三島由紀夫、宮崎駿、深作欣二、、、そうそうたる才人たちとの興味深いエピソードやアーカイブ映像を通して美輪明宏の魅力に迫るとともに、日本におけるトランスジェンダーの起源 を辿る秀逸なドキュメンタリー映画。長年のファンはもちろんのこと、若い世代も本作を見れば美輪明宏の傑出した才能と類稀な美しさに魅了されるに違いない。関西初上映となる本作を、大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズとシネ・ヌーヴォの2会場で、それぞれ1回のみ上映する。映像ソフトは未発売。この機会に鑑賞されることをお勧めしたい。

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<上映日時>
5月19日(土) 16:30~
<場所>
大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズ会議室
大阪市北区天神橋 2-2-11 阪急産業南森町ビル 9階)
<料金>
当日一般 800円センター=アリアンス受講生、クラブ・フランス会員 500円
詳しくはTEL 06-6358-7391センター=アリアンスまで

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<上映日時>
5月26日(土) 12:40~ 
<場所>
シネ・ヌーヴォ 
(大阪市西区九条1丁目20-24)
<料金>
当日一般 1300円
センター=アリアンス受講生、クラブ・フランス会員
シネ・ヌーヴォ会員 1000円
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●主催 大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズ、シネマ・ランタン
●協力 横浜日仏学院、株式会社 貴麗、シネ・ヌーヴォ








2012年3月19日月曜日

関西フランコフォニー祭特別上映『僕のアントワーヌ叔父さん』

自主上映2回目の活動のお知らせです。


3月17日(土)に横浜で上映されたカナダ映画の隠れた傑作、 
『僕のアントワーヌ叔父さん』が大阪でも上映されます!!!


『僕のアントワーヌ叔父さん』(カナダ(ケベック)/1971年/Blu-ray/日本語字幕) 


日時: 
3月23日(金)・24日(土)・25日(日) 各日12時30分~ 


場所: 
シネ・ヌーヴォX(大阪市西区九条1-20-24) 


あらすじ: 
 舞台は1940年代、カナダ・ケベック州の鉱山町ブラックレイク。思春期の少年ブノワは、雑貨屋を営むアントワーヌ叔父さんと一緒に暮らしている。雑貨屋には住民たちが集まり、語らい、酒を飲み、歌い、それぞれがクリスマスの季節を楽しんでいた。そんななか農家の少年が亡くなったとの電話を受ける。 
葬儀屋でもあるアントワーヌ叔父さんはブノワを連れて農家へと向かうが… 


解説: 
 雪深い田舎町を舞台に、少年の成長と住民たちの悲喜交々を、ゆったりとしたペースで、ときに蛇行しながら、詩情豊かに、ユーモアを交えて描く。衒いや誇張や嘘っぽさとは距離を置く地に足のついた演出は、多感な時期にあるブノワ少年の心のゆらぎ、成長の軌跡を、実にナチュラルに見せてくれる。深い雪の風景は寒々しい。だが、しばしば見える愛嬌の良さに、雪原のあちらこちらに暖炉があるかのようなぬくもりを感じずにはいられない。そうして滲む郷愁感。思わず「ただいま」と声をかけたくなる映画だ。 

 本作は最も偉大なカナダ映画の一本として数えられる作品であり、トロント国際映画祭が1984年から10年ごとに批評家や専門家を対象に行なっている”オールタイムベストカナダ映画"の投票では、3回ともベスト1位に選出。横浜日仏学院シネクラブがこの名作を発掘し、3月のフランコフォニー週間を機に、初めて日本(横浜・大阪)で紹介されることとなった。名作をスクリーンで、日本語字幕付きで見られる最初で最後の機会だ。 


監督について: 
クロード・ジュトラ(1930-1986) 
カナダの俳優、脚本家、映画監督。ケベック州モントリオールで生まれ育つ。フランス語圏のカナダ映画を対象にしたケベック版アカデミー賞のジュトラ賞は彼の名前に由来。若干19歳にして撮った短編映画でカナダの映画賞を受賞し、以降もTV映画や短編映画を手がけると、1954年にはカナダ国立映画制作庁(NFB)で勤め始めそこで映画製作に関わる一切のことを本格的に学んだ。1958年、渡仏した彼はフランソワ・トリュフォーやジャン・ルーシュと共に仕事をする。そして1971年、NFBからの協力を受け監督した『僕のアント 
ワーヌ叔父さん』が絶賛され、カナダのアカデミー賞といわれるジニー賞では大賞を受賞。1984年にはケベック映画界に優れた業績を残した個人に与えられるアルバール・テシエ賞を受賞した。クロード・ジュトラは1980年の始めにアルツハイマー病と診断され、1986年、自ら命を絶つ。数ヶ月失踪したのち、彼の遺体はセントローレンス川で発見された。享年56歳。 


料金: 
当日一般 ¥1,200 
シネ・ヌーヴォ会員/クラブ・フランス会員 
センター=アリアンス受講生 ¥1,000 


●主催 シネマ・ランタン、シネ・ヌーヴォ ●協力 大阪日仏センター=アリアンス・フランセーズ、横浜日仏学院、在日カナダ大使館、カナダ国立映画制作庁(NFB/ONF)、Delphis Films ●字幕 大寺眞輔、工藤鑑 ●企画 横浜日仏学院シネクラブ 


こちらの作品はシネ・ヌーヴォXでの上映になります。補助席含めて最大34人までしか入らないため、満席の際はご容赦下さい。 


横浜日仏学院シネクラブの上映情報についてはこちらをご覧ください。 
http://www.institut.jp/ja/evenements/11473 


2011年11月20日日曜日

映画のためにしたいこと



 『クスクス粒の秘密』大阪上映会、12日から開催して、14日、無事最終日を迎えることができました。マイミクやツイッターのフォロワーさんにも足を運んで下さった方がいて(おそらく10人ぐらい)、この場を借りて改めてお礼を申し上げたいです。なかには滋賀からいらっしゃった方も!!まことありがたいことです。 数字について話すと、3回上映し合計73人を動員。25人入れば満席になってそれ以上増えれば補助椅子が必要となるようなたいへん小さい劇場なので、盛況のうち終えられることができたのではないでしょうか。


 こちらの映画の上映会は、今回大阪上映会とのコラボを快く引き受けて下さった日仏学院が定期的に行っているシネクラブという企画で、19日、東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)でも行われました。私も参加しましたが、想像していたよりもずっと(←失礼)上映設備が整った環境で心地よく鑑賞。関西にはこのシネクラブのような上映会は極めて少ないので羨ましいなと思いつつ、だからこそ今回の『クスクス粒の秘密』上映会のように、私が出来る範囲でやれることをやっていきたいと改めて感じました。


 これまでメールと電話でしかやり取りのなかった横浜日仏学院の方と今回初めて直接お会いし、いろいろとお話をさせて頂いて、次の上映会のプランも出てきました。お互い利益は出ませんが、日本未公開の”不遇な”映画のために、そしてそのような映画を心待ちにしている映画ファンのために、関西にて次も必ず上映会を開きたいと思います。乞うご期待。


 
 さて、このブログは『クスクス粒の秘密』の宣伝を兼ねて開設しましたが、コンセプトはあくまで”不遇な映画に明りを灯す”ですので、そのような映画たちを地道に紹介していけたらと思います。もちろん一般公開の映画についても語っていけたら・・・。よろしくお願いします。







2011年11月5日土曜日

特別上映会『クスクス粒の秘密』関連情報④~本作品に対するコメント集

『クスクス粒の秘密』をご覧になられた方々の感想の一部を紹介致します。
リンク先の記事は結末部分に触れている可能性がありますのでご注意ください。
(だからといって興を削がれるような映画ではないと思いますが…)



ゆっくりとしたリズムで始まったかと思うと、終盤に向けて緊張感が倍増していく、あの演出がすばらしい。」
引用元:ただ文句が言いたくて
http://eigaotoko.pokebras.jp/e86895.html

普段仲良くしていても、その場にいない家族や友人を平気で悪く言ったり
善意の下にある何気ない不満や悪意がチラリと覗く、
そういった描写は普段のわたし達の生活そのものなのかもしれない。

(中略)
そして散々陰口を言ったりうんざりしていたのにもかかわらず、皆で心からスリマーヌのため盛り上げる。(中略)ふたつの家族がひとつになっていく過程の映画に思えてくる。
引用元:Bubble Pop Electric
http://blog.livedoor.jp/bonbon229/archives/51103394.html


「スンゲー面白い!見てて、何度か感情がはち切れそうになった。スタイルがどうとか、映画的な話法がどうとか、そういう映画ではなく、パワーがある。物語の大筋を逸脱して、細部がドンドン増殖し始め、逸脱に逸脱を重ねていく様は、たとえばジャック・ロジェの映画なんかでも見ることができるものではあるが、この作品の場合、それがなんだか、めちゃくちゃパワーだ。」
引用元:Dravidian Drugstore
http://blog.ecri.biz/?p=175


前半、会話が延々続く部分、ハリウッド映画のテンポに慣れた人にはいささか退屈と思われるかも知れない。しかし後半に入るとどうなってしまうのかとぐいぐい視聴者を画面に惹き付ける、そんな不思議なパワーがある。スリマーヌの寡黙な演技と、リヌの献身的な思いの交錯が圧巻。

引用元:yohnishi's blog
http://yohnishi.at.webry.info/200907/article_4.html

善良な人の中にあるエゴや本音を描き出したという意味で、確かにこのアブデラティフ・ケシシュと(小津は)似ています。日本の小津を今のフランスでやろうとすればこうなると言ってもいいかもしれません。主人公は、『東京物語』の笠智衆で、リムは原節子、なんですね。」
引用元:海から始まる?!
http://umikarahajimaru.at.webry.info/200810/article_7.html


みんな精一杯虚勢を張っている。その中で光るのが、義理の娘。(中略)窮地が訪れた時に、身体を張って義理の父を救おうとする。 異国でしっかりと生きて行こうとしている姿、母親を一生懸命説得している姿が素敵だ。」
引用元:Nice  One!!
http://plaza.rakuten.co.jp/cucurose/diary/200810220000/


なによりも女性のパワーを感じさせるのが、映画のラスト。(中略)これだけの “女体から湧き出るエネルギー” を見せられたら、オトコなんて膝まずいて負けを認めるしかないハズ。 『クスクス粒の秘密』は、そんな世の中の女性の勇気と家族愛の大切さを ジワジワと感じさせてくれる。“世の中はオンナがあってこそのモノ” だってコトをウッカリ忘れてるオトコ連中には必須の教科書的映画!」
引用元:Vice  Magazine Japan
http://vice.typepad.com/vice_japan/2008/10/movie-week---do.html


ストーリーはどんなありふれたドラマ踏襲しておらず、一言で語れるようなものではないが、いちばん最後にうつしだされる監督からのメッセージが、とても印象的。「普通」でない家族を持つすべての人に、見てもらいたい映画だ。」
引用元:
http://d.hatena.ne.jp/imanakamaiko/20090123

かつてこんな風に誠実に生きた男がいた。それを記憶している人々がいて、この映画がある。(中略)結果ではない、成功でもない、ただひたすらに追い続ける彼の人生、それは尊いものだったと。賞もなく、仕事も干され、感謝されることも報われることもなく、それでも黙々と耐えて誰かに何かをしてやるために生きてきたただの一人の老人、それを制作者は描きたかったのではないか。
引用元:映画ノート@キムパブ
http://blog.livedoor.jp/kimpab/archives/65121370.html













『クスクス粒の秘密』上映会情報


大阪
プラネット・プラスワン
11月12日~14日
http://www.planetplusone.com/special/post_65.php




横浜
東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)
横浜日仏学院シネクラブ
11月19日 18時~
http://institut.jp/ja/evenements/11089






2011年11月1日火曜日

特別上映会『クスクス粒の秘密』関連情報③~メール予約について

11月12日~14日の3日間、大阪・中崎町のプラネット・プラスワンで行われる『クスクス粒の秘密』特別上映会に関しまして、人数限定でメールでの予約を承ります。


”「クスクス粒の秘密」上映会予約”、というタイトルで、


1.名前
2.人数
3.電話番号
4.参加日時(12日19時~or13日13時~or14日19時~)




をご記入のうえ、プラネット・プラスワンのアドレス(cinema-planet1@y2.dion.ne.jp)までお送りください。後日送られてくる”予約完了のメール”を以って初めて予約できたことになりますので、必ずメールをご確認ください。

プラネット・プラスワンはとても小さな劇場で、席数が少なく、混雑状況によっては上映直前にご来館されても見られない可能性もあるかと思います。確実に見たいという方は(ほんとに、これが最初で最後の関西上映になるやもしれないので)この機会にぜひご予約ください。

よろしくお願いします。








『クスクス粒の秘密』上映会情報


大阪
プラネット・プラスワン
11月12日~14日
http://www.planetplusone.com/special/post_65.php




横浜
東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)
横浜日仏学院シネクラブ
11月19日 18時~
http://institut.jp/ja/evenements/11089












ラベル:

特別上映会『クスクス粒の秘密』関連情報②~あらすじ・解説・監督について







上記の画像は10日ほど前に刷り上った『クスクス粒の秘密』上映会のチラシです。ひょっとしたら大阪市内のミニシアターで見かけた方もいらっしゃるかもしれません。知らない方のために、チラシ裏面に記載されている本作のあらすじ・解説・監督に関する情報をこの記事でご紹介します。




<あらすじ>
 
 港町セートで働く60代の港湾労働者・スリマーヌは、寄る年波に勝てず仕事も遅くなり、ついにはリストラの対象となる。彼には前妻スアドとのあいだに3人の子ども、そして孫がいるが、息子たちには厄介者扱いされ、義理の娘のリムだけが理解者だった。無力感が募るスリマーヌ。だが彼はかねてからの夢を実現すべく、古い船を買い取ってリフォームし、クスクス料理専門のレストランをオープンさせようとする。一家総出で開店パーティを行うが・・・。


<解説>


 『クスクス粒の秘密』はクスクス料理を活劇の原動力とした家族ドラマである――と言いたいところだが、そう簡単に要約してしまうことが憚られるほど、複雑な魅力を備えた映画だ。あらすじを読むと、一見、リストラされた60代男の人生再生記のように思える。しかし、一筋縄ではいかない。スリマーヌの恋人の存在で気まずくなった家族の関係が回復する感動の愛の物語かというと、そうでもない。少なくとも、この映画を特定のジャンルや紋切り型の表現に当てはめることはできないだろう。

 そのように形容できない点こそがこの映画の魅力であると言えるが、たとえ大きな事件が起きなくとも、小津安二郎の影響を色濃く受けるというケシッシュ監督が得意とする、ありふれた日常生活のワンシーンから人々の雑多な感情をすくい取るリアルな――演劇的な要素を排した――緊張感あふれる演出に、終わりが訪れる瞬間までスクリーンから目が離せなくなるに違いない。その握力の強さに、最後にはいつの間にか自分もレストランでクスクス料理を待つ客の一人になっているような感覚までおぼえるだろう。

 ジャンル分け不能の”扱いづらさ”のせいか、日本人には分かりにくい移民という問題が絡むせいか、はたまた出演者が無名なせいか、理由は分からないが(あるいは全てが理由かもしれない)、『クスクス粒の秘密』は残念ながら日本では劇場公開が決まらなかった(2011年10月現在)。だが2007年度のフランス映画界で最も称賛された傑作であり、フランス・アカデミー賞(セザール賞)においては作品賞・監督賞・脚本賞・新人女優賞(アフシア・エルジ)を受賞。アブデラティフ・ケシッシュの名前は日本ではほとんど耳にしないものの、セザール賞を既に2度受賞したことからも分かるように、その才能は端倪すべからざるものがある。少なくとも無視できない監督だ。実力を確かめるうえでも、今回の上映会は見逃せない。



<監督について>


アブデラティフ・ケシッシュ(Abdellatif Kechiche)


 1960年、チュニジア生まれ。6歳のときに家族でフランスへ渡る。舞台俳優として活動を始め、1984年に『Le Thé À La Menthe』(Abdelkrim Bahloul監督)で映画デビュー、主役を務める。初めてメガホンを取った『La Faute à  Voltaire』(2000)で映画監督として頭角を表すと、2作目となる『L'Esquive』(2003)、そして3作目の『クスクス粒の秘密』(2007)でそれぞれセザール賞作品賞・脚本賞・監督賞・新人女優賞を受賞。とりわけヨーロッパで高く評価されており、その実力はアルノー・デプレシャン(『クリスマス・ストーリー』『キングス&クイーン』監督)をして「現代フランスで最も重要な映画監督」と言わしめるほど。自身の境遇から移民を主人公にした作品が多く、しばしばパリ郊外や地方が舞台となるが、最新作の『Vénus noire』(2010)はこれまでのケシッシュ作品とは趣が異なり、19世紀初頭のロンドン・パリの見世物小屋が舞台、新境地を開拓した。現代フランス映画で次なる作品がいま最も待たれる監督の一人である。












『クスクス粒の秘密』上映会情報

大阪
プラネット・プラスワン
11月12日~14日
http://www.planetplusone.com/special/post_65.php


横浜
東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)
横浜日仏学院シネクラブ
11月19日 18時~
http://institut.jp/ja/evenements/11089







ラベル: